原稿の準備から執筆まで
1) 原稿の準備
a) 投稿誌を決める:
多くの読者に訴えたい場合は総合的な医学誌に、限定された研究者に読んでもらいたいならその分野の専門誌へ投稿するのがよいです。多くの雑誌は総合と専門の中間辺りに位置しています。
b) 投稿先の雑誌の投稿規定をよく読む:
投稿雑誌によって条件は随分と違っています。
2) 原稿の構成
a) 論理的(logical)でスタンダードな構成を。
- IMRDの原則に従って構成作りを。
- Introduction(緒言)
- Materials and Methods(対象・材料と方法)
- Results(結果)
- Discussion(考察)
- IMRDに何を書けばよいか。
- I: 何が問題になっているかの答えを書く。
- M: その問題に対してどのような研究をしたかを書く。
- R: その結果、何が分かったかを書く。
- D: 分かったことの意味は何か、その答えつまりDiscussionを書く。
b) Abstract(抄録)は原稿を完成した後に書くこと。
c) 英文は読者に分かりやすい表現を使うこと。
- 明快で簡潔な英語で書く。
- ほとんど使われていない単語や長い文章は避けること。
3) タイトルの大切さ
a) 読者はタイトルだけを読んでその先を読むかどうかを決めることが多い。
ダイナミックなタイトルで読者の目をひくこと。そのためにも用語の選択は大事。タイトルを読んでも、その先の本文を読む人は数%にすぎません。
b) Instructions for Authorsをよく読むこと。
- タイトルのフォーマットや字数制限が雑誌によって違うので注意。
- タイトルは極力短く、論文に必要な特定の情報のみに集約すること。
- タイトルは2行以内にまとめること。
- 最も重要なキーワードをタイトルの冒頭に入れる。
- 研究に用いた動物種は明示すること。(例:「動物」ではなく「ラット」)
- 投稿誌が好むタイトルをつけること。例えば、疑問符を嫌う雑誌や、タイトルに研究の結論を書くことを嫌う雑誌など。
- 原則としてタイトルに略語を使わないこと。
4) Introduction(緒言)
- a) イントロダクションは研究で得られた知見について、読者に背景情報を与える場となります。ここでは背景を説明するのに最も重要な文献のみを引用すべし。
- b) 研究理由を明示する。
- c) イントロダクションは短く、ディテールはディスカッションで述べるべし。目安として、400~500ワード以内に。
5) Materials and Methods(対象と方法)
- a) 研究を時系列に書くのではなく、論理的な順序に基づいて書くこと。
- b) 他の研究者である読者が研究を再現するのに必要な情報を読者がフォローしやすいように書くこと。投稿論文が不採用になる理由の大半はこのM and Mの書き方が稚拙であることによる。肝心なのは、貴方の研究が貴方の論文によって読者が再現できるかどうかにあります。
- c) 過去形を使って文章は短く簡潔に書くべし。
- d) “we”を使って能動態で書くこと。非人称受動態は避けるべし。
- e) ダブルスペースで2頁以上にまとめるのがいいでしょう。
6) Results(結果)
- a) 論文の中で最も重要なのはこのリザルトです。短く簡潔にまとめるべし。
- b) リザルトはM and Mに対応させて書くこと。つまり、M and Mで書いた順にRを対応させるべし。
- c) 主要なリザルトは図表を活用させること。図表を読めば読者にデータの理解を容易に促します。
- d) 投稿雑誌によっては図表の件数を何点までとするか制限を設けているので要注意を。
- e) 図表の明示は文章の最後に( )でくくって明示すること。
7) Discussion(考察)and Conclusion(結論)
ここでは貴方のアイデアをどのように証明したか、あるいは、学説をいかにして否定したかを読者に述べることになります。そのためには論理的に文章をまとめ、誤解されないように書くことが大事で、
- a) イントロダクションで特定したクエスチョンに答える。
- b) 貴方が得た結果がこの答えをいかにして支持するのかを説明すること。
- c) 貴方の答えが既知の知見とどのように関連するのかを説明すること。
- d) 貴方の知見が、新しい知見であることの証拠を出すこと。
- e) 貴方の知見の重要性を正当化すること。
- f) 結論は極力明快に書くべし。